【息子さんに「建築学科に行きたい」と言われたお母さんへ②】
前回の質問
「建築学科って何するところなんですか?」
「建築学科を卒業すると一級建築士になれるんですか?」
「建築学科を卒業するとどういうところに就職できるんですか?」
「建築学科を卒業すると建築家になるんですか?」
それでは、下の2つの質問に答えていきます。
「建築学科を卒業するとどういうところに就職できるんですか?」
建築業界と言うのは、日本国内で「最も携わっている人が多い」と言われている業界です。
実際に設計を行う設計者や工事を行う施工者だけでなく、住宅の設備(キッチンやお風呂)であったり、外装材に使うタイルであったり、いわゆるメーカーと呼ばれている職種など、建築に関連する業種は幅広く存在しています。
建築学科の就職先(デザイン系)
まず意匠(デザイン)系の研究室の方は、大きく分けて、下記に就職します。
1.ゼネコン設計部
2.組織設計事務所の設計部
3.個人事務所(アトリエ)
4.ハウスメーカー
もちろん上記以外にも、
5.役所の建築審査課
6.確認審査期間(計画建物が法律に準拠しているか確認する)
意匠系の研究室を卒業しても、設計職ではない、ゼネコンの施工部に就職する方もいます。
上記に書いた4つの業種の違いを簡単に述べると、
ゼネコンと言うのは、工事をする施工部隊を会社内に持っているが、組織設計事務所は施工部がないので、設計しかしないと言う違いがあります。
ゼネコンは会社規模が大きく、大手ともなると何十億、何百億の工事費から利益を作るため、社員の給料もとても高いです。
それに比べて、組織設計事務所は設計しかしないため、利益は設計料のみとなります。大手の組織設計事務所では、大規模な物件も多く、それなりに給料は高いですが、ゼネコンには及ばないと考えて下さい。
個人事務所(アトリエ)は、建築家にデザインを教わると言う感覚で就職する人が多く、給料は驚くほど少ないです。その殆どの人が、将来は自分で独立して事務所を構えることを目的としているので、修行期間とも言われています。
以上が建築意匠と呼ばれている分野になります。
4つ目に書いたハウスメーカーは、よく聞く「〇〇ハウス」と呼ばれているところで、住宅設計ですが名前の通り「メーカー」です。
既に企画設計としてある「住宅のプラン」をお客さんの希望に合わせて、できる範囲で設計(カスタマイズ)するという会社です。ハウスメーカーは、昨今の流れを見ると、設計担当者は月に数十件も設計しており、とても忙しそうですが、給料は結構高いです。
施工系
ゼネコンの施工部に行く方が殆どですが、中には、工務店であったり、ハウスメーカーの工事担当になる方もいます。
構造系
ゼネコンや組織設計事務所の構造部に就職する方が多いですが、個人でやっている構造事務所に就職する人もいます。
設備系
構造系と同じく、ゼネコンや組織設計事務所の設備部(技術部)に就職する方がいます。他には、電気のサブコンや機械設備(空調や給排水)のサブコンさん、またはメーカーに勤める方も少なくありません。
その他
それ以外では、役所の建築審査課として公務員になる方もいれば、確認審査機関と呼ばれている建築を審査する会社に勤める方、デベロッパーとして建築を依頼する立場(言い方が難しい)や、はたまたメーカー(キッチン、お風呂、トイレ、壁紙、タイル、フローリング、手摺、ガラスなどなど)があります。
「建築学科を卒業すると建築家になるんですか?」
もちろん、中には独立して自分の事務所を構えて、名実ともに「建築家」として名乗る人もいます。
ですが、上にも書いたように、建築業界には数多くの業種があり、殆どがサラリーマンとして建築に携わることになります。
ですから、仮に息子さんに「建築学科に進みたい」と言われても、心配せずに応援してあげて下さい。
【息子さんに「建築学科に行きたい」と言われたお母さんへ①】
建築を学んでいる学生や一級建築士を目指している方を対象に書いてきましたが、「建築」を学んでいない方に対して少しでも何か伝えられたらと思い、新たな挑戦として、「建築」とは何か、「建築学科」では何を学ぶのか、「一級建築士」ってどうやったらなれるのか等を書いてみようと思います。
オープンキャンパスの経験
私は学生時代にオープンキャンパスのアルバイトをしたことが数回あります。
意匠系の研究室に所属していたので、オープンキャンパスに展示してある学生たちの優秀作品を来てくれた高校生に説明するというのが主な仕事内容でした。
オープンキャンパスに来られている高校生は興味深く模型や作品シートを見て、
「これはどういう授業なんですか」
「これはどういう模型なんですか」
という質問が多いので、こちらとしても回答がしやすく、授業の説明をしたり、経験談をお話ししたりするのが役割でした。
しかし、「建築学科」に興味を持った高校生の引率として来ているお母さんは、建築学科に対する疑問が多く、建築学科の学生では回答しにくい質問が多かったです。
「建築学科って何なの?」
下記には、当時受けた質問を箇条書きにしております。今回のコラムではそのような質問に答えて行ければと思っています。
「建築学科って何するところなんですか?」
「建築学科を卒業すると一級建築士になれるんですか?」
「建築学科を卒業するとどういうところに就職できるんですか?」
「建築学科を卒業すると建築家になるんですか?」
「建築」を学んでいない方にとってすれば、「建築学科」ってどういうことをするところなのか、ましてや自分の息子や娘が訳の分からない分野に進むことに対して不安が多いと思います。
建築を知らない方へ、少しでもその疑問が解決出来れば嬉しいです。
「建築学科って何するところなんですか?」
この質問については簡単に答えるのは難しく、一言で言うのであれば、「建築」に関連する多様な知識を学ぶ場だとしか言えません。
40歳で若手と言われる建築業界では、社会に出なければ具体的な内容は習得できないのが現実です。
建築学科では、建築に関する膨大ですが、基本的な内容を学習します。
お医者さんや弁護士と同様に、卒業すれば直ぐに建築設計が出来るようになるということはありません。
だからこそ、お父さんは「多額な学費を払って建築学科を出たのに、そんなこともわからんのか?」とは決して言わないようにお願いします。笑
建築学科で学べること
建築学科で学べることについては、多様な内容があります。
建築製図:図面の書き方。表現の仕方を学びます。
例をあげるのであれば、平面図(上から見た図面)の扉の表現の仕方や天井下がり端点線で表記するといった、基本的だが建築図面特有の表現の仕方を学びます。
建築設計:様々な用途(住宅、集合住宅、小学校、図書館、美術館)などの設計課題を通じて、計画の仕方を学びます。
建築計画:建築を設計する上で法規以外で当たり前に守らなければならない基本的な内容を学習します。
都市計画:建築単体ではなく、都市的な視点から見た時にまちづくりの方法について学習します。主に、様々な都市の歴史を学び、特徴的な都市等でリサーチを行い、計画提案をする授業です。
建築法規:建築基準法等、建築に関する法律について学習します。
建築構造:建築における構造計算の基本的な内容を学習します。柱や梁にどれくらいの荷重がかかるのか。地震力等の外部影響をどう反映させて計算するのか。
高校生の時に学ぶ物理の応用になります。
建築施工:建築を工事する際にどのように工事が進んでいくのかやコンクリートの打設の仕方等を学習します。
建築環境:建築に取込んだり、遮断したりする日照や風、温熱などの外部環境との関係を」学習します。また建築内に計画される、空調設備や照明設備等、音環境などの学習を行います。実験を通じて具体的な数値等も習得します。
建築史(西洋建築史・日本建築史)
建築に関する歴史を学びます。
次の質問です。
「建築学科を卒業すると一級建築士になれるんですか?」
建築学科を卒業しただけでは、一級建築士にはなれません。ましてや二級建築士の資格もありません。
建築学科を卒業して、得られるものは、受験資格だけです。
ただ二級建築士は4年制の大学を卒業し、規定の単位が取得(単位取得証明書)出来ていれば、卒業したと同時に受験資格を得ます。
しかし、一級建築士では卒業し、規定の単位を取ったかどうかの証明書である単位取得証明書の他に、一級建築士事務所で2年間の実務経験を積む必要があります。
2008年までは卒業すれば良かったものが、2009年の大学入学者からは、単位取得証明書が必要になり、取得した単位によって実務経験が2年で良いのか、3年になるのか、大学院に行ってインターンや留学を経験して、1年に免除されるのかが決められています。
※単位によって実務経験の期間については、大学によって異なるので、注意が必要です。
昨今の建築業界の様々問題から、一級建築士になるためには、更に厳しくなるとも言われています。
一方で昨年末に「一級建築士試験の受験は大学卒業と同時に可能になる」ということが発表されました。
一級建築士の方が多く引退されている現代において、一級建築士の資格者は年々減少しているためです。
ただ、合格しても一級建築士の免許は取得できず、2年の実務経験を得てから免許交付となるそうです。
一見意味がなさそうですが、一級建築士の出題範囲は膨大で、残業が多いと言われている建築業界では仕事をしながらの勉強はとても大変です。
私自身も毎日0時から3時まで勉強し、7時に起きて会社にいくという生活をしていました。
むしろそれくらいしないと受からないほど難しい試験なのです。
毎年の合格率は10〜12%であり、以前は理系の司法試験とまで言われていました。
偏差値を調べて見ると、パイロットになるより高いそうです。
建築とは生涯学習と言われているように、建築学科を卒業してからも勉強をし、実務経験を積まなければ、一級建築士にはなれないのです。
だからこそ、目指すべき資格なのだと思います。
予想より長くなってしまったので、今回はここまでにします。上記に書いた残りの質問については次回のコラムでお答えします。
次回
「建築学科を卒業するとどういうところに就職できるの?」
「建築学科を卒業した方は建築家になるんですか?」
【建築がスキになったきっかけのゲーム】(少年時代)
正直いうと、私自身、大学2年生まで「何故建築学科に来たんだろう」という自問を繰り返していました。
大学1年生で建築学科に入学した当初、建築雑誌の話で盛り上がっている他の学生たちの話に驚愕したのをよく覚えています。
その当時、私は建築雑誌があることすら知らず、ましてや建築学科がどういう場所なのかもわからず、「どうやって建築を好きになったら良いのか」すら想像もつかなかったのです。
「建築なんてつまらない」
「図面の模写だって上手く描けない」
毎回課題で選ばれる学生は凄いと思っていましたが、競争心はありませんでした。
「何故、高校3年生の時、建築学科に入学したいと思ったのか」
そんな感情が大きくなり、他の学科に転入させ考えたこともあります。
それが、大学2年生の時にあった住宅の設計課題で優秀作品に選ばれ、評価を受けたことがきっかけで、「建築って楽しいな」と思うようになりました。
単純ですが、高校3年生の時に「建築って楽しそうだな」と漠然と想像していた建築学科のイメージが、体感できた瞬間でした。
競争を得て勝ち取った楽しさが、「建築は楽しい」から「設計課題で評価されたい」へと変化し、気づけば「建築設計を仕事にしたい」と、建築に対する思いがどんどん大きくなっていきました。
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競争に勝ち「建築は楽しい」と思えるように
運の良さもあり、大学内の設計課題で評価を貰い、建築コンペでも何作品か賞を頂くようになり、今では一級建築士として組織設計事務所の意匠設計をお仕事にさせて頂いているわけですが、
入社当時、会社の上司に「なんで建築を始めたの?」と言う改めた問いに対して、漠然と「建築が楽しそうと思った」理由以上の答えを私は持ち合わせておりませんでした。
そして今回、ロンロ・ボナペティさんの「#僕らはこうして建築を好きになった」とうコラムを読ませて頂き、私自身が「建築を好きになった理由」について深く考えるようにしたのです。
少年時代にハマったゲーム
小さい頃からサッカーをしていた私の家系は、両親とも体操をやっており、母親は埼玉県チャンピオン、父親は体育大学出身であり、正に体育会家系でした。
もちろん小さい頃から建築が身近にあったなんてことはありません。
小学校のグラウンドが実家の目の前にあった私は、少年時代の多くを外で遊ぶことに費やしていました。
ですが、外出があまり好きではなかった姉の影響もあり、「スーパーファミコン」が我が家に登場しました。
基本的には外で遊んでいた私ですが、雨の日なんかは近所に住む幼馴染たちとゲーム機で遊ぶことも増えていきました。
ゲームの楽しさに気づいた当時小学生だった私は、友達との遊ぶ予定がない時、一人で遊ぶことが可能なとあるゲームソフトにハマったのでした。
「ぐっすんおよよ」
今建築を始めたきっかけを問われたら、迷わずこのゲームソフトを挙げることに決めています。
このゲームの内容ですが、簡単に説明すればテトリスに近いゲームです。テトリスのような枠のついた画面内に上からブロックが降って来て、その落下途中にブロックを移動させたり回転させたりして、落ちて来たブロックを並び替えるというものでした。
唯一違うのはそのクリア方法です。
テトリス同様の画面内の一番下に「およよ」という主人公がおり、「およよ」は文字通り、左右に「およおよ」します。
1段の段差であれば、「およよ」は登ることができますが、2段だと登れないと判断し「およよ」は引き返します。
時間が経過すると、床下から水が上がって来て、「およよ」は溺れてしまいます。
溺れた「およよ」はまたまた文字通り「ぐっすん」してしまうので、水に全身が浸かる前に、落ちて来たブロックで階段や床を作り、なんとか「およよ」を上部へと誘導しなければなりません。
そして、画面の上部にランダムで出現した扉に、水が来る前に「およよ」を導くことでステージクリアとなるゲームでした。
書いててもわかったように、あまりにも単純なゲームでしたが、小さい頃の私はこのゲームにハマっていました。
いかに効率よく「およよ」を階段に登らせ、降りないように床を作り、ピンチの時は壁を作って「およよ」を誘導して、扉から避難させる。そんなパズルゲームに建築的な要素を含んだ「ぐっすんおよよ」というゲームを一人の時ひたすらやっていたのを覚えています。
高校3年生の時「建築学科」を選択した時にこのゲームのことを覚えていたかは定かではないですが、深層心理の中に「およよ」が「ぐっすん」しないように建築を作っていたあの頃があったことを信じたいと思います。
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【漫画カイジの「沼」と杭問題】
「カイジ」とは、人生逆転を掛けた日本のギャンブル青年漫画である。
漫画を読んだことがない人も、映画があるので聞いたことはあるのではないだろうか。私自身も漫画は読んだことがないが、映画は1,2と両方観たことがある。
今回は、映画「カイジ2」に出てくる「沼」攻略について、気になったことがあったので、建築視点で書いてみようと思う。
決して「カイジ」を否定したいわけではない。
もちろん、架空のストーリーであることも理解しているし、物語自体はとても面白い。まさに男のロマンでもある。
ネタバレになるかもしれないので、まだ映画を見ていない方はご注意いただきたい。
----------ーーーーーーーーーー
「沼」とは、映画カイジ2に出てくる高額パチンコである。名前のごとく、数々の挑戦者を沼に沈めたように、かなり難易度の高いパチンコとなっている。
映画では、かつての挑戦者が使ってきた13億という金額が貯められており、カイジはその「沼」に挑むのである。
パチンコ自体詳しくはないが、金額を使えば辺りは必ずくるものだ。
ただこの「沼」はそうではない。
「沼」が置いてある店舗自体が、絶対に出ないように調整しているのだ。
「沼」は、パチンコでよくみる鍵が羅列された「釘の森」と呼ばれるゾーンと3段のクルーンと呼ばれる確率台で構成されている。
「釘の森」を抜けたクルーンは3段あるわけだが、1段目は穴が3つの内1つがあたりであり、そこにはいれば2段目にいける。2段目は4つの穴の内あたりが1つ。そして3段目が5つの内あたりが1つである。
それであれば、クルーン到達時点で13億獲得する確率は、1/3×1/4×1/5であるため、1/60となる。
だが実際は、そのクルーンは手前に傾けられており、3段目のあたりの1つは奥側にあるため、間違ってもあたり穴に入らないように調整されているのだ。
それに気づいたカイジ達は、クルーンの傾斜を奥側にするため、建物自体をクルーンとは逆に傾けるという奇策を打つ。
「地盤が緩い」という、近隣の建物の工事からこの方法を思いつくのである。
結論を言えば、「沼」が置かれた建物に、1㎥の水槽を20個(2t)置くことで荷重を掛け、建物を傾けることに成功したカイジ達は見事に「沼」を攻略し、13億もの賞金を手にするのだった。
気になったことはまさにここである。
荷重によって、建物を傾けることはできるのか?
そう聞かれれば、私は不可能であると即答するであろう。
なぜなら、映画に出て来るような9階建の建物には、【杭】があるはずだから。
ただ、杭があったとしても傾いた建物がある。横浜にあるとあるマンションだ。
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私が入社した年に起きた建築業界の事件といえば、【杭問題】である。
ボーリングデータの改ざんにより、既製コンクリート杭が支持地盤に到達しておらず、建物自体が傾いてしまったと言う事件だ。
建築の構造計画をする上では、まず最初に地盤調査を行う。
方法は様々であるが、最も一般的なのはボーリング調査であろう。正式にはボーリング・標準貫入試験といった方が良い。
計画敷地の数カ所で、ボーリング(孔をくり抜く)をし、その孔を利用して1mごとに地盤の硬さを調査する標準貫入試験を行うのだ。更には土質のサンプルの採取を行い、杭貫入時にその土質サンプルと整合を図ることで支持地盤に杭が到達しているか判断する。
標準貫入試験については、一級建築士の試験に出題されるので必ず覚えて置いてもらいたい。
簡単に説明すると、63.5kgのハンマーを75cmの高さから自由落下させ、そのハンマーを土中に30cm貫入させるのに必要だった打撃回数をN値とし、N値が高い数値なほど地盤は硬いと考えられる。
構造設計者はそのN値を持って、支持地盤を決め、杭の長さを設計するのだ。
当然カイジの「沼」がある建物は、見た感じ9階建なので、いくら古いといってもこのような地盤調査は必ず行われているはずだ。
だからこそ、地盤が緩いのであれば、間違いなく杭が計画されているため、【杭問題】のような事象が起きない限り、いくら水槽による荷重をくわえたとしても、建物が傾くことはあり得ないと断定できる。
映画カイジ2の「サカザキコウタロウ」(カイジと一緒に沼を攻略する男)は、以前の職業を大手ゼネコンの現場監督といっていたので、まず間違いなく杭の存在に気がつかないはずがないのだ。
杭があった場合には、「沼」攻略はあり得ない。
あの規模の建物で杭がないなんて言うのはもっとあり得ないのだ。
もっと言うと、あのような敷地の狭い建物であれば、間違いなく現場打ちコンクリート杭(場所打ちコンクリート杭)であろう。ボーリングデータを元に工場で作成してトラックで持ってくる「既製コンクリート杭」と違って、「現場打ちコンクリート杭」は、先ほども言ったように、実際に採掘した孔の土質サンプルと整合し、支持地盤を確認してから、現場で鉄筋を挿入し打設するので、支持地盤に到達しないと言うことはない。
カイジ達が「沼」を攻略するための建築条件
①9階建にも関わらず杭がなかった場合(構造設計者がポンコツ)
②杭が工場で作成する「既製コンクリート杭」でかつ支持地盤に到達していなかった場合(杭業者がポンコツ)
③施工者があんな狭い敷地なのにも関わらず「現場打ちコンクリート杭」としなかった場合(現場監督がポンコツ)
以上のどれかを満たさなければならない。
普通の設計者であれば、カイジが「沼」を攻略し、地下労働の仲間を救うこともできなかったであろう。
「私が設計者でなくて良かった」とカイジには是非お礼を言ってもらいたい。
【AIはアトムではなくサイボーグ009】
30年後の未来を想像したときに、サイボーグ009にならなれそうだと思った。
人工知能つまりはAIの発展によって今後の生活は大きく変わると言われている。30年前には想像出来なかったことが今は当たり前になっているのだから、AIによっていつ生活が劇的に変化してもおかしくない時代に突入している。
ドラえもんやアトムのような人工知能を持ったロボットが誕生し身近な存在になるのもそう遠い話ではない。
ただ一方で、人工知能ロボットやシステムに恐怖心を描く人も多い。
AIの発展によって人間がするべき仕事はすくなるだろうし、極端な話で言えば、AIロボットの暴走によって人類が滅亡するのではないかと考える人もいる。
海外映画の見過ぎと思われる事も、急激な発展を目の当たりにしている事実から、そう捉える人の気持ちも理解出来る。
ただ30年後の未来、AIが目指すべきところは、決してAIロボットを作ることではない。
【アトムではなくサイボーグ009】
鉄腕アトムは手塚治虫氏の作品である、人工知能を持ったロボットが活躍するヒーローアニメである。人間とは完全に別の個体であり、自ら考え行動するのだ。人では出来ないようなことを解決し、活躍するヒーローだ。
結局は人間が作り出したロボットと戦い、ロボットの暴走は人の邪悪な気持ちから生まれると伝えられている。
それとは違い、サイボーグ009は人間自身にAIシステムを身につけることで、人間自身の能力を向上させるというものだ。
ロボットの中身は人間と言うのが、2作品の違いである。
そして、今日発展が進む人工知能とはまさに後者である。
自動運転なんていうのはまさしくこれであり、後数年もすれば実現が可能である。
私は建築設計を専門にしているので、サイボーグ009が実現する30年後について、建築観点から夢を語って見ようと思う。
近い将来、ドローンを背中につけることで人が自由に空を飛ぶ時代が来る。タケコプターに近い。
車が空を飛ぶのには、様々な交通ルールを期待する必要があり現実には難しかったが、人間単体であれば、可能なのではないかと思う。
3階から4階の会議室に行きたい時には、ただジャンプをすれば良い。
そうなれば、建築基準法に規定されている階段寸法や手摺など意味をなさなくなるし、建物の中央に吹き抜けさえ設ければ、避難は可能になるのかもしれない。
エレベーターやエスカレーターも必要なくなるかもしれない。
もっと自由にもっと楽に楽しく移動することが可能になれば、コミュニケーションを取る時間を増やしたり、ゆっくりと食事を摂ったり、1回の一服で2本たばこが吸えるかもしれない。小さな幸せは、30年後必ず当たり前になると信じたい。
30年後、AIの発展は、物単体の進化ではなく、人の能力を向上させる力として確立されるであろう。
それは夢ではなく現実になる。
【人生時計-ジャネーの法則からみる人生の半分とは】
高校3年生の時、進路相談で来たどこかの大学教授が【人生時計】について語っていたことを思い出す。
【人生時計】とは、簡単に言うと、人間の生涯年齢を80歳と仮定して、生まれたばかりの0歳と死を迎えるを80歳を午前0時とした場合に、「君たちは今何時だと思う?」という自己啓発に近い話文句である。
高校3年生だと18歳だから、18/80となりそれを時計に換算すると、今はまだ午前5時24分である。
つまり、「人生まだまだこれからだ」と言うのだ。
20歳、つまりは午前6時になって、眠りから覚める。
それまでは夢の中で良い。
20歳になって初めて社会に対して活動を見せる時期なのだと言う。
仮に朝起きてから支度をして、仕事に行く通勤時間、そして業務を遂行して家に帰ってくる時間を午前6時から午後19時30分とすると、20歳-65歳までが、社会活動期間となる。
それはいわゆる会社の定時と合致する。
0-20歳までは夢を見る期間又は社会に出るための準備期間であり、65歳の定年後は明日という来世に向けてゆっくりと過ごす時間なのである。
高校3年生のこの時期は、進路を考えていく上で、この先たっぷりと時間がある。だから、焦らずやりたいことを見つけて行こうということ暗示しているのだ。
こういう【人生時計】という自己啓発話は色々なところで出てくる話でもあるが、私はその【人生時計】の概念に盲点を見つけた。
ジャネーの法則の存在だ。
ジャネーの法則とは、人が体感する時間間隔は年齢によって変化するという概念である。
私自身も小学校3年生が永遠に続くと思った記憶がある。
ジャネーの法則というのは、単純に言えば大人の方が子供の時より時間が短く感じるということであるが、その理由として年齢が上がるにつれて経験値が高くなることで、日常に起こる事象に対して新しい体験が減ることが原因だと言われている。
では、ジャネーの法則が実際に存在するとして、それを加味した【人生時計】を考えると、人生の半分とは何歳の時なのだろうか。
通常の【人生時計】であれば、80歳の半分の40歳が半分ということになるが・・・・・・。
ジャネーの法則という年齢による時間感覚の違いを加味した場合、
人生の半分とは、「19歳」だそうだ。
19歳など、もうとっくに過ぎている。
私は28歳だ。
人生の時間は半分も残っていないのかと考えると恐ろしい。
改めて有意義な人生を送るために、もっと頑張らないといけない。そう思う。
【異質な建築としゃぶしゃぶ戦争の結論】
以前【異質な建築としゃぶしゃぶ戦争】というコラムを書いた。中目黒駅にある2つのしゃぶしゃぶ店の抗争についての記事である。
今回はその2つの店舗に新たな進展があったので、お伝え出来ればと思う。
前回のコラムをまだ読んでいない方は、先に下記より【異質な建築としゃぶしゃぶ戦争】のコラムをお読み下さい。
年明けにサラリーマン生活が再開し、ランチにその店舗の近くを通りかかった。
正規店は相変わらず緑色の有孔折板が目立つ。
類似店についても、外観デザインは以前のままだったが、あるものが変更されていた。
店の名前だ。
正規店は、以前と同様に「しゃぶしゃぶレタス」と明記されていたので、名称が変更されたのは類似店の方だ。
おそらく何かしらの抗議を受けて変更せざるを得なかったのだろう。
以前までは、正規店を挑発するような店舗名であり、誰もが姉妹店だと勘違いするような名前だった。
「SHABU SHABU れたすれたす&れたす」
は
【れたしゃぶダイニング】
になっていた。
正規店からの訴えによって、利用者にとっては小さな進展であるが、一先ず店舗名の変更のみで店舗自体は存続していることから、これがお手打なのだろうか。
少し甘い気もするが、仲良くしてくれることに越したことはない。
ただ、正規店である「しゃぶしゃぶレタス」の看板が前よりも少しだけ、道路に近く出されている気がする。
その看板には、【類似店にご注意を】という注意喚起のポスターが貼られているから、正直気納得がいっていないのだろうか。
そんなに簡単な話ではない気がするが、取り敢えずの決着に利用者もあまり納得出来ていない。
いっそ、キャベツにしたら良いのにと他人事なら思ってしまう。
中目黒という街で、レタスの取合いによる戦争が起こるなんて、レタスもさぞ驚いただろう。