【建材とクリスマスツリー】

クリスマスツリーはなんの木だろうか。そう聞いて、【もみの木】であると答えられる人も多いのでないだろうか。

ただ、クリスマスツリーの定義について調べてみると、「クリスマスのために飾り付けられた若木」とある。つまりクリスマスツリーは【もみの木】でなければならないという決まりはない。むしろ現在多く流通しているように、プラスチック製の木を作り、オーナメントで飾り付けられたものもクリスマスツリーと言えるのだ。

ではなぜクリスマスツリーは一般的に【もみの木】と言われているのか。

クリスマス・キャロルの【もみの木】からもわかるようにヨーロッパではある種伝統的にクリスマスツリーにはヨーロッパモミが使用されて来た。それに習う形で日本でも【もみの木】が一般化している。伝統的以外に【もみの木】である理由としてあげるのであれば、クリスマスは冬にあるため、重要なのは常緑樹であるということだ。冬に葉がない木、つまりは落葉樹では意味がなく、冬でも葉を枯らさない常緑樹にすることでクリスマスツリーは生命の象徴でなければならなかったされている。「クリスマスの起源」(O・クルマン著)内でも、【もみの木】はアダムとイブの舞台劇で使われる「知恵の樹」として扱われている。冬に葉が落ちてしまう落葉樹であるリンゴの木の代用として、常緑樹のもみの木が禁断の実を飾るには見栄えが良かったのだ。現在でもクリスマスツリーに赤いボールのオーナメントがあるのは、この影響が少なからずある。

更に針葉樹ということにも意味があるという。

もともとクリスマスツリーはキリスト教とは無関係であったが、ドイツの民を改宗させる試みの中で【樫の木】を【もみの木】にしたという歴史がある。樹木信仰が強かったキリスト教徒は、横から見ると三角形の葉を持つ【もみの木】を「三位一体」を表現していると教えたのだ。

現在でも主流である【もみの木】であるが、入手が困難となり、高価なこともあり、現在では入手が容易で安価、更には幼木のうちでは【もみの木】と区別がつかないと理由でドイツトウヒがなどもクリスマスツリーとして一般的化してきている。日本においても、【もみの木】ではなく、トドマツやエゾマツがクリスマスツリーとして使用されるケースも少なくない。

それでは、【もみの木】とはどんな木なのか。私は建築を専門にやっているので、【もみの木】の建材にフォーカスを当てて調べてみた。

【もみの木】の特徴として、「柔らかい、弱い、腐りやすい」というデメリットが挙げられる。また植林が難しく流通量が少ないという理由からも高価となり、建材としては軽視されているそうだ。

ただ、その柔らかいという特徴から、細かな製作がしやすいためバイオリンやギターなどの【楽器】に使用されることが多い。更には白く美しい色合いを持ち神聖な樹木であることからもかまぼこの板や絵馬、更には冠婚葬祭にも使われる例もある。

「柔らかい」ということは、傷がつきやすいということでもあるから、フローリングに使われている例は決して多くはないが、「柔らかい」ということは足触りが良いというメリットもある。

更には【もみの木】自体には消臭効果も期待できるそうだ。

樹木が発する香り物質をテルペンと呼ぶのだが、【もみ】はアルファピネンという良質なテルペンを多く含むそうだ。この物質は集中力の向上や血圧の低下によってリラックス効果を生み、「森林浴」が可能な樹木であると言われている。

更には、カビの繁殖や害虫の駆除に少なからず効果があるらしい。ゴキブリ対策にも効果を発揮するという。

このように【もみの木】を建材として使うにはメリットもある。建築と樹木においての関係は、このようなメリット、デメリットを比較し適材適所を見極めることである。

傷が付いたフローリングを【傷】と見るか、深みのある【味】と見るかは、施主次第であるが、【もみの木】のフローリングや天井材には可能性もある。もちろん構造材としていようすることはできないのだが。

このように気になった木を建材として調べた時に、建築家として材料と向き合うことができる。

聖なる夜にクリスマスツリーのうんちくを語るのも、建築学生にとって悪いことではない気もする。